「完全対称アンプ」と言う呼称は、金田先生がお付になったものかと思いますが、終段に同極性素子を使った増幅回路事例は以前から多く見られます。今回は(独)SIEMENS MOSFET SIPMOSの興味深い参考回路を紹介します。
「パワーMOSFETの応用技術」 山崎 浩著 日刊工業新聞社刊 より引用参照
(特徴)
①N-ch Power MOSFETのみで構成したシングルエンド・プッシュプルとそのドライブ方法。
②カレント・ミラー回路を多用した動作点の安定化。……….
・終段をパラ・プッシュにした場合は、~160W程度のオーディオ出力を持つパワーアンプで、シーメンス社が同社のPower
MOSFET SIPMOSの為に開発したドライブ回路により帯域幅、歪み率ともに優れた特性を示す。
・N-ch Power MOSFETをプッシュプル構成で用いる、所謂準コンプリメンタリで、ドライブ回路はバイポーラ・トランジスタとは全く異なる。
・2個の差動増幅器の出力は180°の位相差を持つが、負荷抵抗は各々のPower MOSFETのゲート-ソース間抵抗(1kΩ)である。Power
MOSFETの入力抵抗は約10MΩと高抵抗だが、等価的に0.1~1.2nFのコンデンサが並列に接続されている。オーディオ帯域で必要とされるドライブ電力は比較的小さい。 出力段から初段へ33kΩでDC帰還し、1kΩと100uFによりAC帰還が決まる。
・増幅回路は基本的にT1,T2及びT12,T13の2つの差動増幅器の直列接続で構成される。T1,T2の動作点はT3の定電流回路で設定される。T5によりT3のカレント・ミラーT4の電流が決まる。
・T12,T13についてもT1,T2同様に動作点が決まるが、T6,T7,T8及びサーミスタからなる温度上昇保護機能を備えている。T14は出力Power MOSFETに過電流が流れた時導通し、T12,T13への電流すなわちドライブ電流を低減し、Power MOSFETを保護する。