2017年9月11日月曜日

Chapter 15 " 完全対称アンプ "


[学習編]
 金田明彦先生の解説によると、
・「本質的に同極性のデバイスだけでPush-Pull出力段が構成出来るのが、完全対称アンプである。」と、
・「コンプリメンタリーを必要とする見かけだけの対称アンプと異なり、信号の正負に対して、完全に対称的な動作をする。 それには同極性のデバイスを動作させるしかない。これが可能なら、特性の優れたデバイスだけで出力段を構成したり、真空管でOPT (出力トランス)を使わない出力段を構成出来る。」
・「完全対称アンブの2段目の役割は、初段の電流を出力段のドライブ抵抗に伝達する事で、電圧ゲインは殆ど必要無い。 むしろ過剰なゲインは電流帰還をかけて減らさなければならない。2段目差動アンプにバイポーラTr (2SA872A)を使うと、ゲインを減らし出力インピーダンスを高める為に電流帰還が不可欠になる。
・「完全対称アンプの出力段は、Push-Pulls動作なので容量負荷にも強く、出力ケーブル(2497)を10m使用しても駆動できる。この様な特性にするには、出力段のReはIo安定化の為に必要最低限の値にして、電流帰還を少なくする。 2SC959ではReを47ΩにしてもIoは極めて安定だ。」

(金田明彦著「オーディオDCアンプ制作のすべて」(上巻) 誠文堂新光社刊 参照、引用)




[設計・製作編]
 図柄を見ると、2段差動構成で、回路全体からすると上下対称動作をするとは思えませんが、この回路を採用した金田先生の主たる動機は冒頭でも述べられている様に、コンプリメンタリー構成の無い素子(真空管)との互換性を考慮したもの、と言うより寧ろ真空管という素材を活用する為の回路の様にも思われます。ただ、部品点数が少なくシンプルな回路ほど何かしら骨が有るものですが。取り敢えず製作するにあたり、金田明彦先生の指定部品は入手難な部品が多いので、手持ち部品で製作してみます。



  普通に増幅動作をします。Driftは大きいですが、DC offset調整可能です。
しかし、同極性素子で構成された終段を均等な電圧配分でドライブするには困難が伴います。
従って、over-drive時、上下波形は対称に歪み難く、片側が先に飽和します。
この製作回路定数では、位相補正は不要でした。部品点数が少なく魅力的な回路ではあります。