2018年12月20日木曜日

Chapter 20 " 4V駆動 Switching用途 MOS FET Power Amp "


入手可能で安価な、4V駆動S/W用途のMOS FETを用いて、
・2SK4017 / 2SJ681 Ciss 730pF / 700pF
                   Crss 60pF / 60pF
                   Coss 95pF / 90pF
・2SK2232 / 2SJ334 Ciss 1000pF / 3300pF
                   Crss 200pF / 460pF
                   Coss 550pF / 1450pF
simpleな回路構成でpower ampを制作してみたいと思います。

 一般的に、入力容量が一桁違う2SK2232 / 2SJ334をAudio用途として終段に使う場合、
この入力容量を充放電する為、低出力インピーダンスのドライバー回路を設置しなければなりません。
 しかし、今回は「Audiophileとしては決して容認できない」電圧増幅段で直接終段MOS FETを駆動する回路構成では、どういう特性結果になるか? と言う試みです。

 基本構成は、unregulated (raw) DC supply、上下対称J-FET差動入力、
Power MOS FET電圧増幅段、Power MOS FET終段とし、DC offset driftは
Complementary Dual-FETとpassive DC Servoに委ねます。
従って初段には、以下どれかのComplementary Dual-FETが必要条件となります。
・2SK389 / 2SJ109 (1 Chip Dual-FET)
・2SK146 (2SK147×2) / 2SJ 73 (2SJ 72×2) Dual-FET
・2SK240 (2SK170×2) / 2SJ 75 (2SJ 74×2) Dual-FET 等々


  しかし、Dual-FETは絶版になって久しく、まず入手は叶わず、Complementary Dual-FETとなると絶望的と言う状況なので、現実的には単体のJ-FETを厳密に選別してComplementary-pairを合わせて行く困難な作業が必要です。更にDC offset調整は初段FET上下source間にpotを挿入して交互にoffsetを絞り込んで行く至難の業が求められます。


 ・アイドル電流は、手持ちの放熱板の形状から低目の30~35mA程度に設定。
以前のChapter 17 " Simple - Power MOS FET Amp "の実験では温度補償が過剰でしたが、
今回の加熱テストでは、90mA前後まで上がり落ち着きを見せるので、温度補償は効いていますが、不足気味です。(MOS FETはNタイプとPタイプでも温度係数が異なる為、適正な温度補償を施す事は困難を極めます)
・単体のJ-FETをどんなに厳密に選別したとしても、勿論Dual-FETに太刀打ちできません。
また、初段FET上下source間に挿入したpotを動かすと、勿論、電圧増幅段と終段のMOS FETのバイアス電圧が変動するので細心の注意が必要です。結局DC offset drift調整は、15~20mV程度で挫けました。(power ampとしての実用性を考慮すると若干危惧される数値)
・周波数特性に関して、10kHz程度までは綺麗な波形で普通に使えます。しかし、20kHzを越えると急激に低下し、それと共に歪み率も同様と思われ実用に耐えません。over drive時の飽和波形は上下突端に発振気味の暴れが生じます。出力インピーダンスの大きいMOS FET電圧増幅段で、一桁高い入力容量をドライブする事から生じる結果でもあります。
 



2018年11月17日土曜日

Chapter 19 " Current-Feedback Amp architectures "


 回路構成の選択肢の一つとしての電流帰還型アンプについて、論理的な解析は専門書にお願いするとして、電流帰還型アンプをdiscreteで組む場合の回路構成について、Current-Feedback op-ampの等価回路を参考にしながら考察してみたいと思います。




・初段は、電圧帰還型の差動構造とは異なり、2段直結エミッタ・フォロワー構成のbuffer (unity gain)回路になっており、

()非反転入力---kΩ~数MΩの高入力インピーダンス。

()反転入力---数十Ω程度の低入力インピーダンス。

2段目が唯一gainを有するTrans-impedance stage (IV変換)

 Zt(Trans-impedance) = Rt // (1/jωCt)  

 <Rtは伝達抵抗、Ctは伝達容量と呼ばれるパラメータ>

 Rtは、初段bufferの出力抵抗と出力段bufferの等価入力抵抗の並列和。

 Ctは、位相補償容量Ccompに等しくなります。

 上図初段bufferIinTrans-impedance stage (IV変換)を行い、終段bufferの高入力インピーダンスを負荷としてgainを得ています。

・電圧帰還型と同様、非反転、反転増幅が可能ですが、電流帰還型()反転入力側は非常に低入力インピーダンスである為、前段回路の負担が増加し、反転増幅回路は一般的に実用的ではありません。




電流帰還型構成が製品に採用された例を下記に、DC offset対策としてDC servo回路が付加されています。


下図discreteで組まれた電流帰還型アンプの設計例、終段プッシュプル・エミッターフォロワのバイアスは簡易的にダイオードが使用されています。 


初段bufferは、下図の様に勿論J-FETによるソース・フォロワで構成する事は可能ですが、J-FETの入手難、また、特性のバラツキの大きさから、[東芝の場合Idss分類がGR(2.606.50mA),BL(6.012mA)、同一ランクでも大きくバラツク]、従ってIdssVgsの特性を揃える為には、大量の在庫からの選別が必要であり、現実的ではありません。 


(参考文献)

「解析OPアンプ&トランジスタ活用」黒田 徹著 CQ出版社

「続トランジスタ回路の設計」山本 誠執筆章 CQ出版社

「アナログ回路応用マニュアル」島田 公明著 日本放送出版協会

 ANALOG DEVICES notes