2019年7月30日火曜日

Chapter 21 " Protection Circuit for Speaker "


[スピーカー保護回路の考察]
 Chapter 13 "OPS Protection Circuits" でpower-ampの出力素子を保護する回路について考察しましたが、
出力トランスを使用しないDC-amp構成のpower-ampでは、高価なスピーカーを保護する回路は必要とされます。
最近は、PhotoMOS relayなども製品化されている様ですが、
まずは採用実績が多く古典的standardとも言える電磁式接点relayを使った回路から、
1980年代に登場した東芝TA7317Pや最近セカンドソースが市場に出ているNEC uPC1237HA等を検証してみたいと思います。
(下図は、TOSHIBA TA7317P datasheet 1989を参照して、私が作図したBlock Diagramです。)



2. Setting of R2, R3 and C2
 The R2, R3 and C2 not only determine the level sensitivity (time) detecting the DC voltage,
but also operate as a filter bypassing an AC signal. 
The time constant of this filter is T=C2 R2 R3 / (R2+R3) ; 
therefore, let the lowest frequency of the desired amplifier be fL,
 this time constant should be selected to fL>>1/2 pi T And, 
the DC detecting voltage is so set that relay is ON 
when the absolute value of pin2- voltage (or pin3- voltage)
 is increased more than about 0.6 V to 0.8 V ; 
accordingly, the level should be set so that VDC R3 / (R2+R3) > 0.6 V to 0.8 VAs an example, 
Fig.5 shows the DC voltage detecting level corresponding sensitivity (with the relay ON).

(NEC uPC1237HAアプリケーション・ノートより)

東芝TA7317PやNEC uPC1237HA等を参考にとは思いますが、
NEC uPC1237HAの等価回路などは内部動作が理解出来ない位複雑なので、
東芝TA7317Pの等価回路から(±DC voltage detection circuit)と
(relay drive circuit)周辺回路を検証しながら、
電源ON/OFF時のmuting動作と、異常DC offset検出時のspeaker protectionの
二つの機能のみに絞って、discrete構成で製作可能なスピーカー保護回路の構成を考えてみたいと思います。

下記、黒田徹先生の著書に簡易的なスピーカー保護回路の設計例が掲載されており、
参考にさせて頂きます。


[±DC voltage detection circuit ]
 入力のLPFを構成するR,CはfLを設定すると共に、
DC検出回路のsensitivityを決定する重要な部分で、
TA7317PとuPC1237HA双方のdatasheetより上記に解説を抜粋していますが、
どちらの説明も要領を得ません。
 また、他の設計例を見ても非常に個体差が大きい為、cut and tryで臨む必要があります。
何せ高価なスピーカーの生命に関わる重要部分で、慎重さが要求されます。
[Relay drive circuit]
 黒田徹先生の著書に、muting時間の設定はpower-ampと電源回路構成にもよりますが、
2~3sec程度の時定数で充分との説明があります。

(TA7317Pの入力LPFとmuting設定周辺回路例)


以上を参考にして、simple speaker protection circuitの検討に入ります。

 多くの設計例を見ても回路定数や時定数設定に個体差が大きく、
つまり換言すると設置するpower-ampの素性
(回路構成、電源電圧、要求するdetection sensitivity等々)により求められる性能が異なり、
「一概に回路構成や各数値を汎用化するのは乱暴に過ぎる?」様に思われます。
何せスピーカーの生命に関わる事項ですから。
従って、当然の事ですが設計者の理念や責任に於いて設定されるべき回路であると。
 上記、今回検討したsimple speaker protection circuitを、
今までに製作した個々のpower-ampに設置して、
動作安定性を検証しながらcut and tryで各定数を決定して行きたいと思います。

2019年7月17日水曜日

“ DAYTON AUDIO PA130-8 5" Full-Range PA Driver 8 Ohm ”

 PCのモニター用にデスクの片隅に設置出来る小型フルレンジ・スピーカー用キャビネットを制作します。スピーカー・ユニットの選択については「4"~5"程度の口径で可聴周波数を再生可能、音楽鑑賞にも耐える」と言う基準で探しては見ましたが、まず消去法でFOSTEXはこの種のDIYユニットの商品レパートリーは比較的豊富ですが、以前業界の末席で仕事をしていた時、製品組み込み用にフォスター電機(FOSTEX)からスピーカー・ユニットのサンプルを取り寄せた事があるので見合わせ、次に国内、海外ブランドを問わずlow-costのユニットの大半がMade in Chinaか、そのOEM製品でその数が多すぎる為除外したいと思います。
 そこで、今回は全く初めての下記北米メーカーDAYTON AUDIO “ PA130-8 5" Full-Range PA Driver 8 Ohm” (designed and engineered in USA, Made in Taiwan)を採用してみました。台湾には優秀なOEMメーカーが数多く存在しています。また、震災時には、台湾の皆様から多額の支援を頂き感謝申し上げます。

 このユニットは、DAYTON AUDIOのホームページによると、北米内希望小売価格が $23.99で、北米国内の実勢価格は$20前後かと思われ確かにlow-cost、物流コスト等を考慮すると、台湾メーカーの工場出し価格、スピーカーの原価、また台湾メーカーがどの程度の利益を確保出来ているのか危惧する程の価格です。しかし、これが日本に輸入されると、各輸入代理店の物流コストやマージン等により¥6,000~¥9,000程度の日本国内市場価格となります。
 このスピーカー・ユニット単体の日本国内販売価格¥6,000~¥9,000は、商品として比較的高価な価格帯に属してしまいますが、その価格の2/3以上は付帯コストと言う事になります。


加工容易な10mm厚アガチスの端材を使用し、木工ボンドで簡単に制作しました。
極力省スペースにする為、キャビネット1個にL,Rのユニットを装着し、キャビネット内側でセパレイトしています。各パネルは内側にリブを設けて補強しています。前面にバスレフポート設置の余裕が無いので、後面でスピーカーの背圧を調整して抜いています。水性塗料で一層塗装しましたが、木工ボンド跡や端材の埋めた節がマスクされずに現れているのはご愛敬です。
出音は、箱の容量不足と相俟って上も下も期待できません。良く言えばmidrange再生用、このユニット一発フルレンジで音楽再生しようとすると難しいと言わざるを得ませんが、この価格では敢闘賞、それ以上を望むのは酷かと。
スピーカー・ユニットについて、エッジに粘着性溶剤が塗布されておりゴミが非常に付着しやすく、バッフル取り付け時、ボルト・ナットを締め過ぎるとフレームが歪みます。また、取り付けはバッフルの内側を推奨します。今回は外付けしましたが、フレームに取り付けられたターミナルが干渉してバッフル装着に苦労しました。