2019年10月20日日曜日

"DMM (Digital Multimeter) "


PICOTEST M3500A 6 1/2 Digits Digital Multimeter


長年使用しているDMM(Digital Multimeter)の誤差が目立ち始め、校正の必要が生じて来た為メーカーに問い合わせてみましたが、既に保守部品の保有期間を過ぎており修理が必要な場合はお受けしかねます。との事だったので買い替えを検討していた所、下図の様な画像に気付きました。よく見ると酷似した製品が様々なbrandで発売されている様です。OEM(original equipment manufacturer), ODM (original design manufacturer)は業界の常識ですが。つまりは、そういう事でしょうか。

[PICOTEST M3500A]


[菊水DME1600]


[KEITHLEY 2100/100]


[TEXIO DL-2060]


検討した結果、PICOTEST M3500A 6 1/2 Digits Digital Multimeter Made in TAIWAN2台購入しました。

 数か月使用していた所、一台のオルタネイト型電源S/W(一度押すとON-ロック、再度押すとOFF-リリース)のプッシュ・ロックがONしなくなり電源が入らなくなりました。電源S/Wを交換すれば良い事ですが、コンパチ部品を探して交換するのも面倒なので、直結にしてACコンセント側にS/Wを設けて使用しています。(もう少し信頼性の高い電源S/Wを採用する様PICOTEST社にお願いします) それ以外は問題無く、出荷前の校正も正確で、2台とも元気に稼働しています。

2019年9月20日金曜日

" PGM & MOON "

"PGM guitar" (Professional Guitar Manufacture) 
1978年、表克美や乳井和彦らESPの経営陣やビルダーがESPを辞職し、
東京都に元ESP経営陣を中心とした営業や販売を行う株式会社ムーンコーポレーションと、
乳井和彦を代表としたビルダーによって組織された楽器の製作やセットアップなどを行う会社として、
有)P.G.M(Professional Guitar Manufacture)を創業した。
初期においては、ロサンゼルスにて表克美とJOE YOUIが設立した
Just And Limited Co.Ltdと(有)P.G.Mの両方で製作を行った。
創業当初はアメリカのSCHECTERからボディやネックを取り寄せ、組み立てていた。
 その後、松本市にある原山ギター製作所にてボディとネックを仕入れ、国内用として製作していた。
また一時期、国内向けにSCHECTERから商標使用の認可を経てSCHECTERブランドとして、
SCHECTERで製造されたネックとボディを日本のPGMで組み込みされて販売していた。
SCHECTER分裂後も、設立当初からSCHECTERの工場長だったTom Andersonとの関係が続き、
1980年代まで同形式の日本で組み立てを行うTom Andersonのライセンスドブランドのギターも販売された。
1979年からはFender社の製品をアップグレードし、
ユーザーのニーズによってセットアップするギターコンポーネントを販売し、
1990年代前半には東京の市ヶ谷にリペア・ショップ「ファーム」をオープンするものの、
売上が芳しくなく、閉店する。
1999年に、社名をムーンコーポレーションから、ムーンギターズに変更。
同年、帰国した表により設立された有限会社O.N.G Co. Ltdが製造部門となった。
その後、株式会社ムーンギターズは、東京都多摩市貝取の貝取団地内に本社を移し、
ギターコンポーネントの販売を行う。2009年11月には本社を町田市小野路町に移転。

 乳井 和彦
1945年生まれ、青森県出身。P.G.M代表取締役。PGM(Professional Guitar Manufacture)
東京都町田市のクラシックギター製作家、茶位幸信氏に師事し、ギターの製作を学ぶ。
フェルナンデス、ESPを経てP.G.Mを設立、スティーブルカサー、ラリーグラハム他、
国内外著名ミュージシャンのギター・ベースを数多く手がける。

 表 克美
1972年フェルナンデスにエレキギターの開発責任者として赴任。
フェルナンデスの基礎となるビンテージシリーズを開発、同時にギターアンプやエフェクター等も開発し、多数のヒット商品を生み出す。
1977年ESPを設立。工房とショップを始め、オーダーギターの製作と販売を開始、日本のプロショップの礎を築く。
1978年MOONコーポレーションを設立。
1998年ONG MUSICAL INSTRUMENTSを設立、“BLUES GUITAR”を開発。
<Wikipedia等参照> 
                             
 P.G.M(Professional Guitar Manufacture)は、原材料としての木材の選定や仕入れ、
乾燥エージング加工、neckやbodyとしての板材裁断切削加工、
切り出しや削り出し等の加工は行っておらず、またpickupの製作も行っていない。
独自の理念に基づいて個々のパーツをコンポーネントとして各々の専業メーカーから仕入れ、
assemble (組み込み加工)を行い製品化している工房で、
MOONはPGM制作のギターをMOONブランドとして営業販売している。

以下、私が所持しているPGM、MOON guitarを紹介します。
 [ PGM ]
1986-7年頃の製造と思われるsignal neck PGMロゴ
neck : bird's eye maple
fret board : ebony
body : 花梨(カリン)top alder back
pickups : neck , Seymour Duncan SSL-1
    mid , 某国産Hi-power single coil
    bridge , Seymour Duncan JB model

neckは素晴らしいbird's eyeで、fret boardは漆黒のebonyですが、
グリップが細く、薄い感じなのが残念です。
生鳴りは非常に響いて来ますが、pickupを通すとbody backが柔らかいalderの為か、
倍音の豊かさに欠ける様です。
neckとbodyを固定している4本の木ネジを取っても、
bodyからneckが外れない位嵌合加工は正確です。
何れにしても、諸々の消耗部品は交換していますが、30年以上経過しても現役です。

 [ MOON ]
1980年後期から1990年前半の製造と思われるPGM制作MOONブランド

neck : maple
fret board : ebony
body : light weight ash
pickups : bartolini single coil
 bartolini pickupはコイル巻き始め端子、巻き終わり端子、シールド端子が各々設置されており、
ケース内コイルは樹脂モールドされています。
非常に丁寧に制作されており、一般のsingle coil pickupよりノイズは軽減されています。
light weight ash bodyとbartolini pickupの組み合わせは、
倍音の表出が豊かで、clean toneでも充分使用出来ます。
neckグリップは、上記PGM同様痩せた感じの握り具合が残念です。
望むべきは弦振動を体現すべく太くぶ厚いグリップが私の好みです。
Bodyとneckの嵌合加工は、精密さに欠け一般のストラトモデルと同程度です。
 

2019年7月30日火曜日

Chapter 21 " Protection Circuit for Speaker "


[スピーカー保護回路の考察]
 Chapter 13 "OPS Protection Circuits" でpower-ampの出力素子を保護する回路について考察しましたが、
出力トランスを使用しないDC-amp構成のpower-ampでは、高価なスピーカーを保護する回路は必要とされます。
最近は、PhotoMOS relayなども製品化されている様ですが、
まずは採用実績が多く古典的standardとも言える電磁式接点relayを使った回路から、
1980年代に登場した東芝TA7317Pや最近セカンドソースが市場に出ているNEC uPC1237HA等を検証してみたいと思います。
(下図は、TOSHIBA TA7317P datasheet 1989を参照して、私が作図したBlock Diagramです。)



2. Setting of R2, R3 and C2
 The R2, R3 and C2 not only determine the level sensitivity (time) detecting the DC voltage,
but also operate as a filter bypassing an AC signal. 
The time constant of this filter is T=C2 R2 R3 / (R2+R3) ; 
therefore, let the lowest frequency of the desired amplifier be fL,
 this time constant should be selected to fL>>1/2 pi T And, 
the DC detecting voltage is so set that relay is ON 
when the absolute value of pin2- voltage (or pin3- voltage)
 is increased more than about 0.6 V to 0.8 V ; 
accordingly, the level should be set so that VDC R3 / (R2+R3) > 0.6 V to 0.8 VAs an example, 
Fig.5 shows the DC voltage detecting level corresponding sensitivity (with the relay ON).

(NEC uPC1237HAアプリケーション・ノートより)

東芝TA7317PやNEC uPC1237HA等を参考にとは思いますが、
NEC uPC1237HAの等価回路などは内部動作が理解出来ない位複雑なので、
東芝TA7317Pの等価回路から(±DC voltage detection circuit)と
(relay drive circuit)周辺回路を検証しながら、
電源ON/OFF時のmuting動作と、異常DC offset検出時のspeaker protectionの
二つの機能のみに絞って、discrete構成で製作可能なスピーカー保護回路の構成を考えてみたいと思います。

下記、黒田徹先生の著書に簡易的なスピーカー保護回路の設計例が掲載されており、
参考にさせて頂きます。


[±DC voltage detection circuit ]
 入力のLPFを構成するR,CはfLを設定すると共に、
DC検出回路のsensitivityを決定する重要な部分で、
TA7317PとuPC1237HA双方のdatasheetより上記に解説を抜粋していますが、
どちらの説明も要領を得ません。
 また、他の設計例を見ても非常に個体差が大きい為、cut and tryで臨む必要があります。
何せ高価なスピーカーの生命に関わる重要部分で、慎重さが要求されます。
[Relay drive circuit]
 黒田徹先生の著書に、muting時間の設定はpower-ampと電源回路構成にもよりますが、
2~3sec程度の時定数で充分との説明があります。

(TA7317Pの入力LPFとmuting設定周辺回路例)


以上を参考にして、simple speaker protection circuitの検討に入ります。

 多くの設計例を見ても回路定数や時定数設定に個体差が大きく、
つまり換言すると設置するpower-ampの素性
(回路構成、電源電圧、要求するdetection sensitivity等々)により求められる性能が異なり、
「一概に回路構成や各数値を汎用化するのは乱暴に過ぎる?」様に思われます。
何せスピーカーの生命に関わる事項ですから。
従って、当然の事ですが設計者の理念や責任に於いて設定されるべき回路であると。
 上記、今回検討したsimple speaker protection circuitを、
今までに製作した個々のpower-ampに設置して、
動作安定性を検証しながらcut and tryで各定数を決定して行きたいと思います。

2019年7月17日水曜日

“ DAYTON AUDIO PA130-8 5" Full-Range PA Driver 8 Ohm ”

 PCのモニター用にデスクの片隅に設置出来る小型フルレンジ・スピーカー用キャビネットを制作します。スピーカー・ユニットの選択については「4"~5"程度の口径で可聴周波数を再生可能、音楽鑑賞にも耐える」と言う基準で探しては見ましたが、まず消去法でFOSTEXはこの種のDIYユニットの商品レパートリーは比較的豊富ですが、以前業界の末席で仕事をしていた時、製品組み込み用にフォスター電機(FOSTEX)からスピーカー・ユニットのサンプルを取り寄せた事があるので見合わせ、次に国内、海外ブランドを問わずlow-costのユニットの大半がMade in Chinaか、そのOEM製品でその数が多すぎる為除外したいと思います。
 そこで、今回は全く初めての下記北米メーカーDAYTON AUDIO “ PA130-8 5" Full-Range PA Driver 8 Ohm” (designed and engineered in USA, Made in Taiwan)を採用してみました。台湾には優秀なOEMメーカーが数多く存在しています。また、震災時には、台湾の皆様から多額の支援を頂き感謝申し上げます。

 このユニットは、DAYTON AUDIOのホームページによると、北米内希望小売価格が $23.99で、北米国内の実勢価格は$20前後かと思われ確かにlow-cost、物流コスト等を考慮すると、台湾メーカーの工場出し価格、スピーカーの原価、また台湾メーカーがどの程度の利益を確保出来ているのか危惧する程の価格です。しかし、これが日本に輸入されると、各輸入代理店の物流コストやマージン等により¥6,000~¥9,000程度の日本国内市場価格となります。
 このスピーカー・ユニット単体の日本国内販売価格¥6,000~¥9,000は、商品として比較的高価な価格帯に属してしまいますが、その価格の2/3以上は付帯コストと言う事になります。


加工容易な10mm厚アガチスの端材を使用し、木工ボンドで簡単に制作しました。
極力省スペースにする為、キャビネット1個にL,Rのユニットを装着し、キャビネット内側でセパレイトしています。各パネルは内側にリブを設けて補強しています。前面にバスレフポート設置の余裕が無いので、後面でスピーカーの背圧を調整して抜いています。水性塗料で一層塗装しましたが、木工ボンド跡や端材の埋めた節がマスクされずに現れているのはご愛敬です。
出音は、箱の容量不足と相俟って上も下も期待できません。良く言えばmidrange再生用、このユニット一発フルレンジで音楽再生しようとすると難しいと言わざるを得ませんが、この価格では敢闘賞、それ以上を望むのは酷かと。
スピーカー・ユニットについて、エッジに粘着性溶剤が塗布されておりゴミが非常に付着しやすく、バッフル取り付け時、ボルト・ナットを締め過ぎるとフレームが歪みます。また、取り付けはバッフルの内側を推奨します。今回は外付けしましたが、フレームに取り付けられたターミナルが干渉してバッフル装着に苦労しました。

 

2019年4月10日水曜日

Chapter 20 " Symmetrical BJT Input Configuration ” (3)


[Input Stage Configurations]
HeadWize Projects Library “ The Kumisa Ⅲ Headphone Amplifier ” by Benny Jørgensen
入力段を構成する際に、敢えて差動増幅回路以外の選択肢を追求した“Kumisa Ⅲ”についてSymmetrical BJT inputの手法の一つとして取り上げてみたいと思います。
公開されている回路図を下記に、説明文中の数値も記入しています。

  唯、voltage source (Q5,Q6)として使用されている2SC2389 / 2SA1038は、下図データシートによると最大定格(Pc)が300mW程度の様です。また、±24V電源はunregulatedで供給されています。

無信号 ( idle ) 時の動作、電位状態を説明内容から推測して記入し、理解し易い様に書き直した回路図を下記に。

HeadWize Projects Library “ The Kumisa Ⅲ Headphone Amplifier ” by Benny Jørgensenの説明文中より抜粋。
・Q2 and Q3 are the input transistors…set up in a standard “ground emitter” connection.
・Q5 and Q6 are a “voltage source”.
・Q1/Q7 and Q4/Q8 make up the 2 “current mirrors”. Q1 is a diode compensating for the loss in Q7 and the same goes for Q4 and Q8. The Vbe of Q1 and the Vbe of the Q7 neutralize each other within an error of 60mV, making this stage a good current mirror with 4.6 times current gain. At 1V  input the current through Q2 is 3.7mA and then the current through Q7 is 17.1mA since the gain is around 4.6 times. The current through Q3 would in the same situation be 1.2mA and 5.5mA through Q8. The current forced on the resistor network (1.8Kohm + 1.8Kohm + 33Kohm +33Kohm = 853ohm ) is 17.1mA-5.5mA = 11.5mA . The voltage on the output will then be around   853ohm×11.5mA =9.8V . The gain is 9.8 times (a little less in practice) = 19.8 dB … (数値、内容    共に原文通り)
つまりは、初段がdifferential Inputではなく、設計者がglobal feedbackを否定しているので、上下電圧増幅段とGND間の抵抗負荷を用いてgain設定を行っている様です。また、同位置にDC servoを還しています。
尚、headphone amplifierとしては、電源電圧が高過ぎるので私自身は製作していません。

AMB Laboratories “ The Cavalli-Kan Kumisa Ⅲ Stereo Headphone Amplifier ”
Modified version “ The Kumisa Ⅲ Headphone Amplifier ” by Benny Jørgensen evolved Alex Cavalli
all-discrete, all-BJT fully complementary topology, no global negative feedback, DC servo…Benny Jørgensenの基本conceptを踏襲しながら、Alex Cavalliにより下記変更(文中より抜粋)が加えられmodify, enhancementされたもの。
・The input BJTs have been replaced with Toshiba 2SK170 / 2SJ74 J-FETs…
・The output stage topology has been changed from a Darlington emitter follower configuration to a Sziklai CFP (Complementary Feedback Pair).
・The DC servo scheme is significantly modified…
・All small signl BJTs replaced with BC550 / BC560 and the output transistors with BD139 /BD140.
・… a regulated dual rail DC supply using 7815 /7915 IC regulators… 

上記公開回路図の各ブロックを、前回同様理解し易い様に書き直した回路図を下記に。

input stage構成において、differential input architecture以外の選択肢に必然性が有るかどうか?

2019年3月19日火曜日

Chapter 20 “ Symmetrical BJT Differential Input ” (2)


 東芝C1815/A1015の無選別使用企画、上下対称差動回路構成の改訂試作を重ねていますが、
2段目電圧増幅段Trの温度係数を相殺する為、上下対称2段差動構成として回路を組んでみます。 
 視覚的な図柄は端整の様ですが、上下のバランスを図る事が難しく、
無選別TrでTR1,TR2によるDC offset調整は煩雑困難を極め、相当数の差し替えが必要になりました。
Offsetゼロ調整後の加熱テストでは、DC offset driftは±20mV前後変動、常温ラニングテストで±3mV内外を移動します。
Complementary Dual-Trが入手不可の現状で製作事例が少ない事からも、無選別で組むには敷居が高い構図です。
部品点数が増え煩雑な割に報われない結果になりました。

 この企画は、下記ホームページ、詳細は存じ上げませんが、敬意を持って参考にさせて頂きました。(http//ufodev.o.oo7.jp/X_A100AMP.gif)より参照

2019年3月17日日曜日

Chapter 20 “ Symmetrical BJT Differential Input ” (1)


[Symmetrical BJT Differential Input & AC-Amp]
AC-amp 構成にすると100% DC negative feedbackによりDC領域で gain = 1となり、出力に現れるDC offset電圧は初段差動回路の入力offset電圧のみとなります。そこで初段差動回路のDC offset電圧最小化に腐心する事となります。
・差動回路を構成するBJT (bipolar junction transistor) の特性を揃える。
・emitterを縛るconstant current sourceの精度を上げ、温度係数の補償を施す。
しかし、complementary dual- transistorは入手不可の為、前回同様入手容易な東芝2SC1815 / A1015を無選別で使用する事を命題としています。
 前回試作した(transistor / LED) current source、LEDの温度に対する電圧変動は無視できますが、transistor |Vbe|の温度係数(-2.0mV~-2.5mV/℃)を相殺出来ないので、前回の実験ではDC offsetゼロ調整後、局部加熱テストでDC offset driftが±数十mV程度変動し実用性を欠く結果に至っています。そこで、まず下記constant current source回路の温度係数を補償、或いは相殺する構成に変更してみます。  
  current source回路をcurrent mirrorとしてtransistor |Vbe|の温度係数を相殺し、constant current sourceにはBJTより温度変化に鈍いJ-FETとします。
 実験結果として、
・DC offsetゼロ調整時、無選別C1815 /A1015の為、TR1(100Ω)では取り切れない場合があり、数個の差し替えが必要になりました。
・ゼロ調整後のdriftは、局部加熱テストで±20mV前後変動します。(唯、シャーシ内に組み込まれた場合、環境温度として相対的に変動するものと思われ、局部的な温度変化の可能性は低いと思われますが) 室温でのDC offset driftは±数mV程度に収まってはいます。
 実用性を考慮してDC offset driftを±1mV以下に抑えるとしたら、やはり初段差動transistor (Vbe、Hfe)のmatchingの必要性と熱結合、次段transistorの温度係数による変動も検討しなければなりません。

2019年2月20日水曜日

Chapter 20 " Complementary Differential Input Architecture ”

 前回の試作では、下図初段上下対称差動回路にJ-FETを使用して来ましたが、Complementary Dual-FETの入手難により、特性を揃える為の選別が困難を極める為、以下の様に素子を変更して試作実験を行います。

 ゲート電流が流れないとされるJ-FETと比較すると、入力抵抗や帰還抵抗の設定値自由度が制限されますが、transistorによる上下対称差動回路に変更してみます。バラツキの大きいJ-FETに比して個別の差異は小さく収まるとは言え、TrのVbeやHfe等の個別差は無視出来ずComplementary Dual-Trが望ましい事は勿論ですが、これも既に入手難です。そこで、市場に大量に流通しており入手容易な東芝2SC1815 / A1015を敢えて無選別で下記上下差動回路に採用し、試作検討します。

 前回試作PCBを流用し、初段をTr (C1815/A1015)上下差動回路に変更したものです。上下差動回路のテールをLed基準による定電流回路で縛っています。2段目電圧増幅段電流は、MOSFETのゲートをドライブする為10mA程度としています。

 実験結果として、TR1でDC offset 調整可能ですが、ドライヤーによる加熱テストではDC offset driftが予想以上に変動(増大)します。また、終段バイアス回路は前回同様温度補償不足で、加熱によりアイドル電流は増加します。従って、実用に耐えるとは言い難い回路構成です。CDプレーヤを接続しての試聴では電解コンデンサによる100%DC-NFBですが、聴覚上大きな瑕疵は感じられませんでした。










2019年1月26日土曜日

Chapter 20 " Switching用途 2SK2232 / 2SJ380 MOS FET Power Amp " [Ⅲ]

  前回の2SK2232 / 2SJ380試作の首尾が上々だったので、更に駆動段の出力インピーダンスを下げ高域遮断周波数を広げる為、push-pull emitter followerのdriverを付加した回路を試作、試聴してみます。2SK2232 / 2SJ380のswitching周波数を100kHz程度として、Rg (150Ω)と各MOSFET Cissのgate充放電するに充分なdriver電流を流し、バイアス回路はMOSFETの温度補償をより適正化する形態に変更しました。




















  アイドル電流は、50mA程度に設定し、ドライヤーによる加熱テストでも60mA以下に収まっているのでほぼ安定しているものと思われます。f特は100kHzには及びませんが、domestic audio用途としての可聴周波数に全く支障は無いものと思われます。
試聴したCDを下記に。
“Sonny Criss” alto saxの表現力にも違和感はないと。
“THE PIANIST” Chopinを聞きたかったので。



Chapter 20 " Switching用途 2SK2232 / 2SJ380 MOS FET Power Amp " [Ⅱ]

 『Power MOS FETをanalog push pull audio回路に応用する場合、NchとPchのcomplementary素子が必要で、求められる特性は伝達特性のVgs(th) threshold voltageが低い事、順方向伝達アドミッタンス|Yfs|が出力電流によらず一定である事、そして双方の数値が同じである事が求められる。また、Switching用途MOS FETを用いてanalog信号を増幅する場合、揃えるべきパラメータは順方向伝達アドミッタンス|Yfs|と入力容量Cissである。電力損失Pdや電力容量Idを揃える必要はない。そして、駆動段の出力インピーダンスと出力段MOSFETの入力容量Cissがこの増幅回路の高域遮断周波数を決定する。』(山崎 浩著「パワーMOSFETの応用技術」より)
  前回の試作では2SK2232 / 2SJ334の組み合わせを使用しましたが、2SJ334 のCiss 3300pFが重く、このgate入力容量が周波数特性(f特)を押し下げているものと思われるので、今回はCissが1/3、gate入力電荷が1/2以下の2SJ380に変更、更に電圧増幅段でダイレクトにドライブする為、手持ちで最も低Cobの2SC3421 / 2SA1358に変更し、充分なgate充放電ドライブ電流を流し、終段MOSFET温度補償の適正化を図ってみました。

2SC3421の定電圧回路でMOSFETのバイアス及び温度係数を補償し、不足するバイアス電圧を固定抵抗で補足しています。アイドル電流を50mA程度に設定し、ドライヤーによる加熱テストでは60mA弱まで上昇しますが、ほぼ安定状態を維持します。敢えてE12系列の固定抵抗でバイアス電圧を補足したので若干温度補償が不足気味ですが、potで可変すれば絞り込みは可能かと思われます。F特は20kHzまで何とかという状態ですが、仮組して視聴してみるとf特や歪み率等の特性を覆す心地良い楽音が出力されます。CD playerを接続して以下のソースを試聴してみました。


“BUD POWELL IN PARIS” 録音自体がハイ上がりに加工されている様で、ブラッシングが心地良い。
“CARL ORFF CARMINA BURANA” 人間の音声の塊を聞きたかったが、ちょっと実力不足か。